ノースポール (ENo.2)
家屋から出て外にいる。
強い風を感じながらも、湖の隅に座ったままぼんやりと佇んでいる。
2025-11-23 21:34:00 #1197
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
探索以外でも気まぐれにビー玉は近くにいたりする。
そうすると都合が良かったりもするので。

主にどこからか飛んでくるこちらへの敵意だとか。
2025-11-23 21:40:36 #1198
> ファントム(6)
ノースポール (ENo.2)
貴方にもしも心変わりがあるとするなら、これの見た目は別の者になるだろう。
ノースポールは、貴方の方に視線を向ける。

今の貴方は、一体誰に会いたいのか。

2025-11-23 21:42:26 #1199
> ファントム(6)
\距離が近い!/ (ENo.2)
それはそれとして敵意や嫉妬は感じる。
なんでお前が近くにいて相棒ポジみたいになってんねんみたいな。
2025-11-23 21:43:42 #1200
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
ビー玉は何も変わらない。
相変わらず会いたい誰かはいないし、そんな事はどうでも良い。

とりあえず向けられる敵意にビー玉内部の闇がくるくると機嫌良さげに回った。
2025-11-23 21:45:40 #1201
> ファントム(6)
ノースポール (ENo.2)
それなら此方も何も変わらない。
同じように姿を見せて、同じようにその場に佇んでいる。

「……順調か?」

探索を共に行ってはいるが、情報共有は殆どしていない。
今貴方が隣にいるなら時間もあるのだろうと思って問いかけた。
2025-11-23 21:50:12 #1202
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
「相変わらず石ころまみれだな」

ふん、と鼻を鳴らすような音。
状況自体は芳しくなさそうだ、拾えるものはいつも大体同じ。
2025-11-23 21:54:47 #1203
> ファントム(6)
ノースポール (ENo.2)
「そうか」

いつの間にか膝の上にあった白い花を手で弄びながら返す。
自分も同じだった。特別な経験も、取得物も何もない。

「なら、まだ時間は……かかりそうか」

此処から脱出して自由になる、お互いの目的への足掛かりは見えない。
最近別の人物に会ったが、本当に先を越されている可能性は高いかもしれないと思った。
2025-11-23 22:03:21 #1204
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
「クソめんどくせェ男はいたな。
 そいつがカス石じゃねェ石を持ってンのを知ったくらいか。
 見つからなかったらいずれ奪うのもアリだろ」

探索とは別にそういう事があったという事実もついでに。
やや物騒な考えも添えつつ。

「は~~~ァ!ッたく、何の刺激もねェしつまんねえ場所だな全く」
2025-11-23 22:08:43 #1205
> ファントム(6)
ノースポール (ENo.2)
「……此方は、うさぎの子……なら。
 あの子がそういう石を持ってるかは知らない。
 でも、やはり人数は少なくもないみたいだ」

女の子として触れた、マーチといううさぎ耳の少年を思い出す。
石に関して話をする余裕もなかったが、拾っている人物がいるなら彼にも可能性はある。

奪うという考えは否定も肯定もしない。
止められる力もない。

「やはり、争いや諍いがあった方が……楽しい、か?」
2025-11-23 22:17:47 #1206
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
「うさぎィ?そいつァ知らねェな。
 女ならいた。狙いやすそうで良いな、うさぎか」

うさぎも、それからそういえばこちらを見ていた少女も。
狙いやすさでは効率は良さそうで、そいつらが持ってたりするなら拾えずとも奪う事をやはり思考に入れる。

自分と良く話した男は、また別だった。
あれは然るべき時に叩きのめした上で、奪いたい。
随分苛つかせられたので、尚の事。

「あ?そりゃァな、暇で仕方ねェ。
 お前は暇は苦痛……じゃあねェだろうな」
2025-11-23 22:22:17 #1207
> ファントム(6)
ノースポール (ENo.2)
「女性……は、俺は見てないな。
 うさぎ耳の少年、純朴そうな……。
 心に傷を負っていたようだった、話がうまく出来なかった」

あまり彼のことは狙ってほしくない、と思ったが口に出さない。
そう言って止められそうにもないし、制限する権利はない。
話をしながら白い花の茎を何となく編んで輪っかにした。

「暇、という感覚があまりない。誰もいないと、何も考えられない。
 殆どが、ただ人の気配に向かって歩くだけ」
2025-11-23 22:33:04 #1208
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
「……へェ」

少しばかり楽しげな声。
そういうのを転がすのもまた楽しい。

肉体を得れば、きっとこの存在はいろんな人間を踏み荒らすのだろう。
貴方の思いもやってる所作も何も気にせず、この世界に閉じ込められたビー玉は憂さ晴らしになるような事を考える。

「何も?ふゥん、そりゃ退屈なんてするこたなさそうだな。
 人の気配ねェ。お前も何だかんだ人を求めてンだな」
2025-11-23 22:37:26 #1209
> ファントム(6)
ノースポール (ENo.2)
「でも、もしかしたら変わってる……かもしれない。
 複数人いるなら、他人同士で……影響も与え合う、だろうから」

自分が出会った時にはそうだっただけで、時間と共に人は変わりゆく。
もしかしたら他の人の影響を受けて状況が変わっている可能性はあった。

白い花輪を、何となくビー玉に乗せようとして……怒られそうだな、とひっこめた。
貴方の考えとは裏腹に、ノースのやることはどうも気が抜けている。

「そう、だな……俺は誰もいないと、何にもなれない。
 誰かの何かになって、自分の意識と存在を保つ。
 その為に、対象を探す。この身体が、何となくで……」
2025-11-23 22:42:56 #1210
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
「じゃあそれごと壊すだけだな」

状況が多少変わろうが、一人二人で寄り集まろうが、その力なんてたかが知れている。
何ならその傷を負っていた状態から回復していたり、そういう方向に向かっていたりするなら尚の事楽しいだけだ。
そういうものを潰すのは、楽しい。

花輪を乗せていたら、貴方の想像通り怒っただろう。
何しやがる、と。

「なるほどね。生きた屍だな。
 お前の意思ってわけじゃあねェわけだ」
2025-11-23 22:47:10 #1211
> ファントム(6)
ノースポール (ENo.2)
「そうか……」
「それだけ、君は強大なのか」

どれくらいだろう、と空を見上げて何となく呟く。
この広い夜空さえも掌握してしまう程だろうか。
世界を終わらせる色んな形を見てきたけれど、それと同じくらいだろうかと。

花輪は結局貴方の隣に置かれて、新しい花を編み始めた。
誰に渡せるでもないものを。

「本能に、近いのかもしれない。でも本能だとすると、俺の意思なのだろうか。
 “誰の形”でもいいから、兎に角存在を固定させたい……そんな感じ、か」
2025-11-23 22:51:45 #1212
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
「当たり前だろ。
 大抵の世界は壊してきたんだからな」

何を持って当たり前とするかはさておき、ビー玉は当然とばかりに言葉を返す。
自分は強い。ただの概念だった頃はさておき、世界にはびこるあらゆる闇を喰らい、自我を持ち。
実体を欲してとある男に寄生し、力を培った。

自負がある。自負があった。あった。
事実幾つもの世界を滅ぼした。

「本能ォ?
 じゃあ意思なんじゃねェか、”させたい”ってのはお前の望みってこった」
2025-11-23 22:57:11 #1213
> ファントム(6)
ノースポール (ENo.2)
「それは、凄いな。俺も聞いたことがない。
 世界ごとに、壊れる理由は様々だった」

「否、原因が君だっただけで、壊れ方自体はまた……様々なのか。
 だとしたら俺はもしかしたら、君の壊した世界にいたことも……あるのかもしれない」

実際どうだかは分からないけれど、それくらいには自分も多くの世界を見てきた。
寄り添った人々が亡くなったり、世界と共に壊れていくのを見届けた。
その道はどこかで交わっていたのかもしれない、覚えてないけれど。

「俺もそう、思った。確かに身体は勝手に動く、そういう役目を持っているから。
 だけど結果として、それは俺の存在を保ちたい意図と合致する。
 意思であり、本能であると思う」
2025-11-23 23:01:48 #1214
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
「ちィとつついてやりゃ破滅の波紋は勝手に広がる。
 ヒトは勝手に絶望する。だからそうやっていくきっかけを作って、時折つついてやって、最終的に好きにぶっ潰したりもする。
 面倒な時はそのまま力で捻り潰す事もある」

「ハッ、まァいたかもしれねェしそうじゃねェかもしれないな。
 いようがいなかろうがいちいち人間一人ひとりなんざ覚えちゃいねェが」

壊し方は気まぐれに変えたけれど、大抵は悪意を持ってヒトの増悪をふくらませるやり方だ。
或いは少しつついて崩すきっかけを与えたり、時にはヒトの中に混ざってより混乱に貶めたり。
色々な手段を使ってきた。

「なんだかんだてめェ自身が死んでるわけじゃねェってこったな」
2025-11-23 23:10:32 #1215
> ファントム(6)
ノースポール (ENo.2)
「怒りは他の怒りを呼ぶし、哀しみもまたそうだ。
 感情は伝播するから、それによって混沌は生まれる。
 ……そういうこと、か?」

「まあ、覚えてないのが当たり前だろう。
 俺も分からない」

普通にしているだけならば、きっとその存在は感知されないか、若しくは人の気配に完全に紛れてしまう。
そんな存在が多くの中から覚えられていたら、それはそれで不思議なものだ。
面倒な時は力で捻り潰す力もあるのなら、物理的に破壊する時はどんな感じだろうなんて考える。

白い花冠が出来れば、それをビー玉を囲うように置く。
上に乗せないなら気にされないかな、と思って。

「まあ、生きてはいるから……。精神的に脆弱なだけ、だと思う。
 身体はちゃんと存在してて、殆ど人と同じだ」
2025-11-23 23:15:36 #1216
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
「そういうこった。
 ヒトは脆い。ヒトは醜い。人は弱い。
 いくら光の下で過ごしていようが、光に生まれついていようが、あっという間に闇に飲み込まれる。
 少しつついてやりゃあすぐに流される。崩れていく」

「お前はそもそも大概の記憶が曖昧なんだろ」

人は負の感情に弱い生き物だ。
だからきっかけさえ与えれば、あっという間に呑まれていく。
抗う事ができるのは、ほんの一部だ。一握りだ。

ビー玉の周りに白い花冠が囲っていく。
何だか儀式めいてきた。こういうのは余り気にはしないようで何も言わなかったが。
しかしそれはそれとして、花か、と思って暫し静かになった。
何かに集中しているようで、ぐるりぐるりと玉の中で闇とビー玉本人の魔力が巡る。

一瞬、ピシ、とひび割れるような小さな音と共に、周りの白い花冠は全て黒に染まって、そのまま塵となるように消えていった。
――基本は魔力を利用した力。それに準じた呪い。そういう類をこれは得意とする。

「弱ェヒトの中でも一際弱っちィ存在ってこったな。
 そりゃあ大変だなァ」

ちっとも大変そうだとは思ってない声だった。
2025-11-23 23:24:40 #1217
> ファントム(6)
ノースポール (ENo.2)
「闇の引力は、強いと思う。恐ろしい過去が、優しい記憶よりついて回るように。
 元々別の色だからこそ、塗り替えやすいのかもしれない」

「そうだな。だから、覚えてない。
 滅び方も……色々あった、くらいで。頑張らないと、思い出せない」

光を持っているからこそ呑まれる、高い所から飛び降りれば衝撃が強くなるように。
だからこそ人は強く深く、闇に魅入られる可能性があるのかもしれない。

意外と何も言われなかったのを見て暫し眺めていると、ほんの少し力の流れを感じた。
そのうち花冠は真っ黒になって、塵みたいに全てが儚く消えて行った。
消えていく寒白菊に何かを思うように瞬いた。
指先で宙を掻いても、塵ひとつ掬えなかった。

「これが、力なのか」

大変だ、という話には適当に頷いて、貴方の力に興味を示した。
2025-11-23 23:31:41 #1218
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
「ッは、だろう?ヒトはそういうモンだ。
 一度呑まれちまえば、どこまでも深く落ちていける。
 何だったら俺が手を入れるまでもねェ。
 そういうモンから俺は生まれた。だから俺は強い。
 ま、実体を持てたのは俺が生まれた世界に、より色濃く堕ちてた奴がいたからってのはあるがな」

「一応思い出せはすンのな。
 ま、態々そういう事をする利点なんざねェだろうが」

色々なヒトを見てきた。
闇は色濃くヒトの中に広がっていく。
負の感情はどこまでも、根深く染み付く事ができる。

ころ、と少し貴方から離れたところへビー玉は移動した。

「魔力だ。俺が肉体の形成のために最初の餌にした奴が戦いに秀でていた。
 才能があった。肉体も強かった。
 生体兵器として利用されるくらいには、だ」

「そこに俺の生まれのモンを合わせれば、こういう事くらい本当は簡単にできる。
 後はそうだな、いーもん見せてやるよ」

転がって、動きを止めた。
流石にまだ殻から出てくる事ができないビー玉は、最盛期の頃とは程遠い力となってしまったけれど。

また暫くの沈黙が流れた。
そうして、

>
2025-11-23 23:47:04 #1219
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
――ビー玉周辺に、一気にぶわり、とそれなりの範囲に黒い花々が咲いた。
禍々しい気を放ち、魔力を放ち、黒い粒子が花粉のように舞う。
負から生まれた存在の魔力は、悪意とあらゆる闇が付随する。怨恨、孤独、怒り、悲しみ、絶望。

そうして広がった黒い花畑は人の負の感情を掴んで離さぬもの。
どれだけ清廉潔白な様であろうとも、一点のシミがあればそれを広げるもの。
そうしてその黒き思いをふくらませるもの。

そういった類の、呪いだ。

「引きずり込まれたくなきゃ近付くなよ。
 態々分かりやすい形にしてやってンだ」

ころころとビー玉が貴方の方へ戻っていく。

「ヒトをより深く落としていく呪いってとこだな」
2025-11-23 23:50:43 #1220
> ファントム(6)
ノースポール (ENo.2)
「君が実体を持てるほどに、深い闇を持っていた人がいた……のか。
 闇は不滅だ。だから君もまた、不滅なる者に……近いのだろう、しな。
 それは強いに決まっている」

「きっかけさえ、あれば……。
 あまり思い出せたことは、ないけど……」

時間が経てば経つほど記憶も意識も遠くなり、思い出すのは難しい。
だからこそノースポールは書き換えられる前の自分の情報を思い出せない。
昔の世界の記憶も、思い出そうとしたところで苦労するだろう。

貴方が離れて行けば、視線だけでそちらを追う。

「……そういう意味だと、餌にも恵まれたんだな。
 君自身の力も相まって、今の状態でも……これくらいできる、と」

「いいもの?」

不思議そうにノースポールは首を傾げる。
貴方のしようとしていることが予想できないので、ただじっと黙って待った。

2025-11-24 00:06:50 #1222
> ファントム(6)
ノースポール (ENo.2)
──黒い花が、貴方を中心として一気に視界に広がる。
それを見たノースポールは、初めて表情らしき何かを顔に浮かべた。

それは喜怒哀楽を示すものではない。ただ驚いたような、呆然とした表情。
瞬きもせず一身に、色の違う双眸が花畑の方を見つめていた。
自分と同じ色であり、全くもって逆の色。一面の黒。

表情を見せたにも関わらず、何を想っているのかは読み取りづらい。
それは分かりやすく特定の感情を示すような表情じゃないからだ。
ただ、その光景に何かを感じて、目を奪われているのだけは確かだった。

「  、 」

貴方の言葉が耳に入っていないようだった。
ずっと座っていたノースポールは、ゆっくりと立ち上がる。

そして戻ってくる貴方とすれ違うように、
貴方の魔力で出来た境界に触れようと手を伸ばして、

2025-11-24 00:11:53 #1223
> ファントム(6)
黒いクリスタル (ENo.2)
おえ~~~っっっ!!!!やめろやめろやめろおお!!!

とんでもなく煩い黒いクリスタルがポケットから喚き始めて、ぴたりと止まった。

「な~~にがいいものだっ!!ゲロ吐きそうな光景だよ!!
 さっさとしまってしまって!俺のノースポールに何にも与えるなっ!!」
2025-11-24 00:14:26 #1224
> ファントム(6)
ノースポール (ENo.2)
目が覚めたノースポールによってクリスタルはポケットの奥深くに戻された。
ぎゅっぎゅ。
2025-11-24 00:14:56 #1225
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
貴方の様子にビー玉は訝しげにはした。
ビー玉なので訝しそうな様は何一つ表に出ないけど。

ただ、こちらは注意を一応したにも関わらず、貴方が花畑に近付いていく事に――まぁ、それならそれで行く末を見ようかと思った。
どうせ命を奪うそれではない。

が、それは中途で果たされることはなかった。
貴方のものではない喚き声が聞こえて、その声で貴方は止まってしまった。

ふむ、とビー玉は一拍。

なお花畑は消える気配がない。
何なら消すつもりもない。

「……なァノース。
 アレに触れたいのか?あぁいうモンが欲しいのか?」
2025-11-24 00:21:07 #1228
> ファントム(6)
ノースポール (ENo.2)
ポケットがもごもごと動いている。
口の部分を手で押さえつけてじっとしていると、そのうち抵抗がなくなったので手を離した。
このように今は妖精の影響に無視を決め込めるのは楽だ。

それからまたすとん、と同じ場所に座り直す。
未だに瞳は黒い花畑の方へと向けられているが、表情はいつもの無彩色に戻った。

貴方に問われれば、そちらに視線を向ける。

「……、わからない」
「ただ、君の魔力だと思った」

無意識だった。それこそ本能に導かれるようなものだった。
だから上手く答えられなくて、ゆっくりと今度は目線が湖の水面に向かう。
いつもより強く貴方の存在を感じた気がする。
ビー玉越しの鈍い感覚じゃない其れを。

「花は何となく、興味が惹かれる」

それはきっと正解じゃないけれど、間違いでもない。
残っている寒白菊を摘まみ上げて眺める。
2025-11-24 00:28:36 #1232
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
さっきの声は俺のノースポールに何も与えるなと言っていた。
そして貴方の近くにいれば大抵は敵意を向けられる。
何となくを理解する。
同じ感情ではないけれど、かつてそうやって兄のクローンに執着し、徹底的に管理し支配下に置いていた少年がいた。

あれに近いとビー玉は解釈する。

「なるほど?俺の魔力ねェ」

少しの間考える素振りの時間。
寒白菊をまた摘んでいる貴方に、暫く後に声を掛ける。

「ノース、俺に手に乗せろ」
2025-11-24 00:34:59 #1233
> ファントム(6)
ノースポール (ENo.2)
長い長い年月を重ね、ノースポールは丁寧に管理されてこの形となった。
与えられるのは妖精からの歪んだ愛と、人々から向けられる誰かへの感情だけ。
そして求めてもいないそれと、自分の為ではないそれの為にひたすらに己の身を削ってきた。
ノースポールは存在を擦り減らすばかりだった。

そんなノースポールを、殆ど初めて見据えたのが貴方だった。
偶然にも“ノース”として扱った初めてが、貴方だった。
それらの影響は、きっと妖精があんなにも焦るほどに静かに降り積もっている。

「傍にいると、今でも少しは感じる。
 だけどさっきのは、何にも隔たれていなかった」

貴方が今此処にいる、という認識がそれによって強く印象付けられるほどに鮮烈だった。
確かに近づけば孤独感がより強まったのに、同時に寂しくない気がした。
ひとりじゃない、そんな気が。

「……、?」

手を乗せる?良いのだろうか。
普段なら嫌がられそうなことを求められ、少し間が開いたがノースポールは灰色の手を貴方に乗せる。
2025-11-24 00:42:21 #1234
> ファントム(6)
PL (ENo.2)
【ごめん読み間違えてるね
 貴方を手に乗せます(ビー玉の上に手を乗せるな)】
2025-11-24 00:45:57 #1237
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
人間の寿命に対して長い時間、人が耐えきれない程の長い時間、管理されかくあれとされるだけでも人間は己をすり減らす。
そうして何も感じないようにして、己を消していく。
貴方の場合はそれよりもずっとずっと酷い状態になっているのだろう。

「まァそりゃあそうだろうな。
 俺を封じてるこの忌々しいモンは俺のじゃあねェ」

魔力を、呪いを伴う花畑は、純粋にこのビー玉由来のものだ。
普段は他者の魔力の中。
何かを感じる事ができる貴方なら、そういった違いには敏感なのだろう。

そうして掌に乗せられたビー玉は、ゆらり、ゆら、とまた球体の中の闇を揺らす。

貴方が先のものに何を覚え、何を感じているか。
それは分かりはしないし、分かった所で何を思う事は無いかも知れないが。
考えたことをすれば、先の声の持ち主を煽る事ができると考えた。

貴方の掌の上、流石に今日はそろそろこれが限界か。
先よりも長い時間ぐるぐると球体の中で、魔力が練り上げられていく。

「ノース。お前さっきからずっと弄ってる花が好きなのか?」
2025-11-24 00:53:49 #1238
> ファントム(6)
ノースポール (ENo.2)
最初は酷いと思っていた。どうしてこんなことにならなければいけないと憤っていた。
絶望が爪先にまで染み込んで、そのうち全てが灰色になった。
絶望を感じる心の底すら抜けた。それを保ち切れなくなった。
全てを喪った“ノース”が状況を打開したいのは、もしかしたら貴方と出遭ってほんの少しだけその絶望を思い出したからかもしれない。

「出たい、のだものな。自分で入った訳じゃない、だろう。
 ちゃんと遮断されている。分かりにくい」

こうして掌に乗せても、傍の花畑の方が強く貴方を感じてしまう。
世界を幾つも滅ぼした貴方を封印するほどの壁だ、それくらいじゃないと機能しないのだろう。
闇を抱いて揺れるビー玉を眺めながら、片手でくるくると白い花を回す。

魔力の流れだけは感じられる。
貴方の意図までは、此方も分からない。

「これは……寒白菊だ。ノースポール。
 俺の名前の、名付けられた花。今の俺の、存在」

縋っているだけだろう。
もう本当の名前が分からないから、兎に角自分を維持できる要素に縋っているだけ。

「でも、名前じゃなくて 色と見た目は、好きかもしれない」
2025-11-24 01:02:04 #1241
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
だァ~~~~れが好き好んでこんな形になるってンだ!
 ま、……そろそろ出る目処も立ってきただろ、この小せェ檻から」

だから今こうして、自分の一部である魔力を外への影響を伴い出す事ができるのだろう。
己の知らない世界で人々から魔王とも、しかしてその実体は神であった者と、その仲間の力。
自身の最初の餌のクローン体が築いた絆の形。

忌々しさに舌打ちをする。

「あ?お前と同じ名前?は~~なるほどな」

気に入っていそうならその花を模したものをと思ったが、となるともう一捻りとビー玉は考える。
が、生憎そんな情緒的な知識は流石に持ち合わせてはいない。

「……見た目な」

色はその通りにはできないだろう。
自身の魔力の色は先のように真っ黒だ。
だがまぁ、形なら。

ピシリ、と小さく小さくひび割れる音。
隙間から魔力が溢れ出て、黒い見目のそれは貴方が自分を乗せてる方の手首に巻き付いた。
紛れもない、何の隔たりもない、この存在自身の力。

――抵抗がなくば、邪魔がなくば、こんなものが貴方の手首に咲くはずだ。

>
2025-11-24 01:19:10 #1244
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
ノースポールと見た目が良く似た花。
何とは言えない黒い花が魔力をまとって手首に刻まれる。

……これは単に偶然なのだけど。
寒白菊と似てはいても微妙に異なるように描いたその形状は、加密列にとても似ている事だろう。
先の呪いと違って、これはただ、ファントム自身の魔力があるだけだ。
2025-11-24 01:20:07 #1245
> ファントム(6)
“ノース” (ENo.2)
「分かってる。扱いづらい身体に、わざわざ入る必要は……ない、もんな。
 ……そうか、なら石集めも……もっとやらないと、」

貴方が外に出たら、そのままこの世界の外にもちゃんと出られるように。
そうやって用意をする為に、自分も解放される為に石を探しているが未だに必要なそれは見つからない。
まるでまだ足りないと、世界が自分達に囁きかけているみたいに。

舌打ちには不思議そうにしていた。

「……、」

そしてその後の貴方の行動にも不思議そうな表情を見せた。
と同時に、先程と同じように敏感に魔力に反応した様子を見せる。
ぽと、と片手に持っていた寒白菊が落ちる。

手首から広がる魔力を感じる最中、“ノース”はしっかりとポケットの口を握った。
そこから滲む敵意と嫉妬が殺意になりそうな程に強くなるのを感じて、それを抑え込むように。
邪魔はさせないとでも、暗に示すように。

“ノース”は食い入るように何かが巻き付く手首を見つめていた。
目を見開いて、網膜に焼き付けようとするかのように。

2025-11-24 01:29:57 #1252
> ファントム(6)
“ノース” (ENo.2)
咲いた花をじっと見下ろした。何事も言わず、ただ黙って。
感情の読み取りにくい表情は変わらないが、邪魔な気配を押さえつける動きには明確に感情が宿っている。
貴方の魔力に呼応するが如く、ノースの感情は咲いた。

「……カミツレ」

貴方がそれを想定して形にしたかは分からない。
だけどノースポールと似て非なるそれは、今の自分の存在とは似ているようで全く違う。
今の自分を踏襲しながら、だけど自分ではなかった。

魔力を感じる。先程手を伸ばしたかった輪郭が、今自分の上で咲いている。
いつしかポケットから手は離れ、ゆっくりと花弁の輪郭を撫でていた。

2025-11-24 01:40:51 #1253
> ファントム(6)
“ノース” (ENo.2)
顔を上げて、掌の上の貴方を見る。
だけど礼は言わない、何も言わない。
貴方にとってきっと忌々しいであろう言葉は、ひとつたりとも向けない。

ただ、今まで何も語らなかった顔と、二人を包む空気だけが全てを物語っていた。
底の抜けた男に咲いた確かな満足感と、それを支配せんとする誰かのとてつもない殺意を。
2025-11-24 01:46:50 #1254
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
邪魔は、入らなかった。
その可能性を考えてはいたし、今は一つのことに集中するだけで大変遺憾ではあるがいっぱいいっぱいなので、邪魔が入ればそれまでだった。
が、しかし。

貴方がポケットを抑えている事に気付いた。
酷く心地良い殺意が向けられるが故に、邪魔くらいされるかと思っていたので――その邪魔をさせないかの如く、抑えてる様に大層これは愉快な思いになった。

ヒトやそれに準じる生き物の、大事な何かを掠め取ったり壊した時の、この感覚。
貴方を縛る存在の場合は殺意らしい。喜ぶように球体の中の闇がぐるりと渦巻いた。

「あ?」

カミツレ、の言葉に疑問符が浮かぶ。
少しだけ思考が巡り、けれど咲かせた花を撫でる様に思い至る事があった。
ハッ、と。これは笑う。

>
2025-11-24 02:10:16 #1258
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
「お前はどっちが良い?
 お前に付けられたノースポールという名。俺がノースと呼ぶ名。
 今ここで、この瞬間にお前に刻んでやった花。
 そいつの名、そいつの存在」

感情はわかりにくくとも、空気感で分かる、雰囲気で理解する。
視線が向けば、これは言葉を紡ぎ始める。
向けられる殺意のなんと心地が良いことか。
ヒトやそれに準じる存在は、やはりいつだって簡単に暗い方へ転がっていく。
こんなものなのだ、光ある下で生まれ光を持った存在は。この程度なのだ。


「選べよ、ノース」

選ばせること。それに意義があるとこれは考える。
尤も沢山ある選択肢の中からではなく、こちらが都合良く用意した選択肢という狭さではあるが。
貴方が、貴方自身が選択をする事。

>
2025-11-24 02:13:32 #1259
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
「お前はノースポールか?
 ここで俺が呼ぶノースか?
 それとも、それらと似ているようで違う、俺が与えたカミツレか?」

無理やり抑えつけるよりも、人は”選ぶ環境”を用意してやった方が掌握しやすい。
実質択の殆どない選択肢でも、選んだ意識が残るので。
自ら選んだのだという意識は、例え縛り付けられていても”縛り付けられた”という感覚を得にくいだろう。

即ちこれは、新たに貴方を己へ縛る事になるのだけれど。
きっとこれは、ノースポール以外を貴方が選べば、満足する。
2025-11-24 02:13:39 #1260
> ファントム(6)
黒のクリスタル (ENo.2)
とんでもない嫉妬が、怒りが、殺意が貴方に叫ぶように襲いかかる。
どうしてお前が、俺のなのに、これ以上奪うなと強くこの場所を包んでいる。
寧ろそれが貴方を増長させると分かっていても止まらない。

止められないと言った方が正しいのだろう。
今自分がいるにも関わらず起きている出来事に、怒りを感じず心を無になんか出来やしない。
貴方がその先に続けた問いによって、それは尚更強くなる。

2025-11-24 02:20:37 #1263
> ファントム(6)
─── (ENo.2)
ノースポールにとって今まで選択肢など存在しなかった。
執着されているからこそ強く縛り付けられて、仕方なく道を選ぶしかなかっただけ。
用意されたレールの上を歩んでいたに過ぎない。

だからこそ、貴方が並べた選択肢はノースポールにとって潤沢に見えた。
それが貴方に誘導され、選ばせているようなものだとしても。
ゼロとイチが全く違うように。

「……ファントム」

男は名前を呼んだ、無意識に。
その丸い闇色を見つめたまま、奥底の貴方自身に届くように。

しかし満足感には、徐々に別の色が帯びた。
未だ残る諦めや寂しさが、貴方から貰った仄かな温かみを侵食する。

「  、  」

二度目は声にならなかった。
だけど貴方を変わらず見つめていた。
伝えようとした想いは、選択を目の前に消えていく。

少しだけ目を伏せて、漸く男は息を吸った。

2025-11-24 02:27:45 #1265
> ファントム(6)
“ノース” (ENo.2)
「俺は……今、“ノース”だ」

小首を傾げて、貴方の様子を窺うようにして答えた。
この答えはどうだろう、とでも言うように。

本当はカミツレになりたかった、そんな気がする。
だけど貴方に与えられた名前を冠せぬままにしたのは、一時の満足感が自分を満たしてもこれが今だけの関係だと弁えているからだ。

自分は貴方のカミツレになれない。
今そんな期待を寄せたら、きっと貴方の名前を冠したままにひとりぼっちになる気がした。
それは今の状況よりももっと絶望的で、孤独だろう。


「“ノース”なら、まだ……戻れる」

ノースポールは退路を残した。
貴方に縛られながらも、捨てられたとて壊れないように。
その性質を、貴方を知ったからこそ、まだ必要な一線を引く。

「いつかは、」
「……他の形を、考えてもいいかもしれない」

だけど初めて、想いを明かした。
きっと貴方が嫌がるであろうと分かっていて、一輪の花を差し出すように。
貴方の印がある手を伸ばし、丸い貴方の境界線を指で撫でた。
2025-11-24 02:36:37 #1266
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
目の前の男を縛る何かの存在の、嫉妬が、怒りが、殺意が、何よりの糧になる。
ぱきぱきと、本当に小さな音が球体に響く。
それだけこの魔力の殻の中身は、魔力は、力は、増大して満ち始めている。

貴方から呼び名を紡がれると、殻の中身がぐるりと回る。
ファントム。幻影。亡霊。幻。かつて玩具代わりに深く関わった、クローンを生み出した少年が皮肉混じりに呼んだもの。
それからは、ファントムを通称としたけれど。
故の、名ではない。だから、この存在の深い所へはどうしたって届かない。
生まれたとき、これはただの淀みであり澱みだった。
明るく暖かいものを見上げていた。色とりどりのものを見上げていた。名付けられるそれらを見上げていた。
しかし淀みは世界に迎え入れられず、名付けられることもなかった。


提供した選択肢を与え、その答えを待つ間。
これは何も言わずに貴方を見ていた。

そうして返ってきた答えに、ふん、と鼻を鳴らすような音。

「ま、及第点てとこにしてやるか」

>
2025-11-24 02:58:55 #1270
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
ただ、戻れると口にした事にはやや不愉快さを得た。
一欠片、この存在が貴方と同じ想いを持てていないが故に掌握しきれなかったもの。
まぁそれでも、あなたがノースポールではなく、ノースを選んだ事には違いない。
それで十分だろう。

「はー、いつかねェ。
いつになるやらってとこだがなァ。
形を決めるンだったら、もうちょい食いでのあるモンになるんだな」

今だと貴方自身から得るものはないし。
ただ、それが無い上に余計な挑発や煽りをしないので、これはまだまともに話してるとも言えるが。
ややあって。何かを、……花を差し出すような動きにぐるりと中身が回る。
球体に指が触れる。指がなぞる。球体の気配がざわついて、その直後。

バリ、と。何かを破る強い音がこの場に響いた。
この存在を閉じ込めていた魔力と、その内側から弾けるような力の本流に強い風が巻き上がる。

>
2025-11-24 03:18:00 #1271
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
力の本流は黒い風のようなものとして知覚されるだろう。
やがてこれの持つ魔力ではない魔力は、飲み込まれるように消えていき、そう経たない内に黒い力はひとつの形を作りあげた。

深い紫色の長い髪が、ふわりと靡く。
ほんのわずか赤をたずさえた銀色の瞳が貴方を見やって、それから何も着ていない状態で己を見下ろし、パチン、と指を鳴らすと現れた黒い衣装が身を包む。

適当に伸ばされたような髪を1度かき上げ、軽く首を何度か横に降った。

>
2025-11-24 03:25:03 #1272
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
貴方と殆ど変わらない背丈の男が、再び貴方へ視線を向けた。
2025-11-24 03:28:29 #1273
> ファントム(6)
“ノース” (ENo.2)
殻が割れたのを見て、薄く口を開いて。
何かを察したかのようにじっと貴方を見つめ続けていた。
触れた瞬間巻き上がる側の草花に、反射的に顔を腕で隠した。

同時に放たれた力の奔流から、貴方を感じた。
きっと黒い風の中で、知らず知らずのうちに“ノース”の瞳は輝いた。
貴方の存在を、もっともっと近くに感じたのだから。
ずっと貴方に悟られないように隠していた喜びが、口をついて出そうにまでなった。

「あ、」

名前を呼ぶ為に動かした口から単語は出なかった。
目の前にいる初めて見る姿に、その長い髪の色合いに目を奪われる。
流れる髪の動きにまた手を伸ばしかけて、引っ込めて。
一度目を伏せてから漸く貴方を直視できた。

「……、ファントム」

貴方の通称。名ではないものを呼ぶ。
“ノース”はこの呼び方しか知らないから、貴方にとってきっと深い意味のないそれを呼ぶ時に強い想いを乗せてしまう。
淡々としたものじゃなかった。
貴方自身に呼び掛けたい、貴方に此方を見てもらいたいという意識があった。
2025-11-24 07:18:26 #1276
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
「あー……」

首に片手を当てて、ごき、と何度か軽く鳴らす。
久々の自由の身。久々の肉体。
軽くて指を握り、開き、掌を上にして凝縮された黒い風を巻き起こしては消した。

舌打ちをひとつ。

「なんだ?」

軽く体の調子を確かめる仕草をしていた男は、貴方に呼ばれると銀の瞳を向ける。
顎をやや引いていて、僅かに顔が下に向いているからか。
身長はそう変わらないのに本当に少しだけ、貴方を見上げるような形になる。

こちらを呼ぶ声の響きに気付けど、大した事ではないように。
いつもどこか響いて反響していたような声も普通のそれで、特に反応するでもなかった。
貴方をちゃんと、見ているけれど。
2025-11-24 12:26:31 #1282
> ファントム(6)
“ノース” (ENo.2)
見惚れる程に長い髪。
紫色のその姿、刺々しい雰囲気はどこかイカリソウを思わせる。
黒い風で時折それが揺れるから、余計に目を惹かれた。

自分から呼んだくせに、すぐに答えられなかった。
銀の瞳を見つめて、こんな色をしていたのかと何処か遠い物事のように思う。
ちゃんと此方を見ているのが分かって、嬉しくなって、寂しくなる。

「……」

貴方にとって自分は大したことがないから。
それとも、貴方にとって名前を呼ばれることが大したことではないから?
どちらにせよ、知らないうちに自然と言外に含めたニュアンスが届かないことに苦悩する。

見られているのに、見られていない気がして胸が締まる。
こんな感覚も久しぶりだった。
同時に感じる別の感覚も、ノースにとっては何百年ぶりの感情で。
それを抱えたまま暫く俯いていたけれど、そのうち貴方をもう一度直視した。

2025-11-24 20:11:28 #1309
> ファントム(6)
“ノース” (ENo.2)
どうせいつか捨てられるなら、この関係は終わるなら。
今、好きなように扱われたって何も変わらない。
大丈夫、致命的な傷だけは負わないように自分でラインを引いたから。

ノースはそっと、両手で貴方の片手を取ろうとする。
拒否されなければきっと、距離の縮まったノースからより感情を感じるだろう。
今までにない心の動き、無感動だった心に吹いた黒い風。

複雑な感情だった。
苦悩、躊躇、不安、寂寥──そのような仄暗い感情の中に、何か別のものが混じる。

きっとそれまでよく目を凝らさなければ見えなかったそれが、一気に表に広がっていく。

2025-11-24 20:15:26 #1310
> ファントム(6)
“ノース” (ENo.2)
「……君の、顔が見られて……嬉しい」
「よかった」

それは喜びだった。
決して見せなかった、生まれなかった非常に原始的な正の感情が、一気に溢れ出す。

ある意味、それはノースが貴方に意図的に見せた“隙”であった。
貴方に特別な気持ちがある可能性は、ずっとどこかでノース自身が懸念していたことだ。
そしてそれを時にわざと隠していたのに見せたということは、貴方に付け入る隙を与えるということでもある。

きっと貴方にとって“貴方を想い慕う存在”というものは、忌々しく、そしてとても扱いやすい駒になるから。
ノースは言葉と感情の裏側に、どうなってもいいという覚悟を見せたのだ。

名前を呼ばないのは、貴方自身にそれを伝えたいから。
手を取ったのは、嘘偽りなく貴方を想う心があるから。
表向きの“ノース”が、そして裏側の“カミツレ”が、明かした想いを貴方は好きなようにすることができる。
それを目の前の男は、望んでいる。
2025-11-24 20:22:45 #1311
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
そう、これにとって貴方の存在は大した事がない。
有象無象と変わらない。
ただ奇妙な生き物が貴方に執着し、故の醜い感情がそれから向けられるものだから。
利用価値があると思った。
何より貴方は感情の起伏が無に等しいから、傍に置いて苛立ちもしないし。

これにとって、貴方は無彩色だ。

呼ばれて返事をしたものの、何も言わない貴方に訝しげに眉が寄る。
片手を腰に当ててオイ、と声をかけようとした時に、視線がかち合った。

>
2025-11-24 22:57:42 #1314
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
「……ぁ?」

貴方の両手が、もう片手に触れる。
球体の時、先程一寸触れたそれを思い出しぴくりと指先が反応する。
何を、と返そうとし手を振り払おうとした所で貴方の感情を、これは感じた。手の動きは中途で止まり、様々なそれが混ざりあったものに口を閉じる。

これにとって、貴方は無彩色だった。

鮮やかとは言えない感情が渦巻く中、これは光を見た。
原始的な、光を見た。
鮮烈な光だった。
世界に生まれ歓迎され、あらゆる命が歓喜の声を上げる。
それに近しい光。

>
2025-11-24 22:58:39 #1315
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
「お前、……」



さて、確かに。
こちらへ感情を寄せる存在というのは、利用がしやすい。

ヒトの中に混じり、己ではない誰かとして生きながら世を混乱に陥れた時には、想われる事もあった。
存在しない誰かを思う様には笑ったものだ。

時には己を神とし崇拝するヒトを利用して、世を戦乱に陥れた時には数多のヒトが己に殺される事を救いとしていた。
死や己に対する恐怖が少しでもあればそれを膨らませ、そうでなく恐怖を崇拝に塗り替えたものには他者の手で殺させ、存分に恐怖と絶望を味わったものだ。

光ある感情は、いつも存在しない誰かへの想いだった。
向けられるものはいつだって、恐怖や怒り、怨恨、憎悪、恐れ、時に裏切りから、あるいは奪われた者の悲しみの類だった。

>
2025-11-24 23:00:11 #1316
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
貴方の感情を再認識しようとする。
苦悩、躊躇、不安、寂寥……喜び。
その中に、こちらへ、自分という存在そのものへ対する恐怖はないのだろうか。
貴方を利用した事への恨みだとか。悲しさや寂しさの類でも良かった。
何でも良い。

恐怖、怒り、怨恨、憎悪、恐れ、悲しみ。
膨れ上げさせれば光あるものなんて、色鮮やかなものなんて、簡単に呑み込まれるはずだ。
相手は一人だ、尚更。


ほんの僅か、男の首がすくむように動いた。
視線は下から、貴方を見上げる。

――力を持った絶対的な強者は、他者を見下し見下げる王者の目をするはずだ。
――しかし男は、強大な力を持っているはずなのに貴方を下から見上げている。
2025-11-24 23:01:30 #1317
> ファントム(6)
“ノース” (ENo.2)
そう、いつだってこの男は無彩色だった。
きっとその目に映る光景も全てが白黒で、時が止まったような世界に生きていた。



しかし貴方が咲かせた花が、貴方自身が姿を現したことが、世界に色をつけてしまった。

その最初の色が、複雑に入り混じる中で貴方に見せた喜び。
一色に染まり切らない、しかしそれでも明確に色づく光色の感情。
きっと貴方は触れなかろうとそれを受け取れただろうけれど、それは触れた両手の温もりから余計に滲むのだろう。

それは大切なものに触れる手指の動き。
壊れないように慈しむ行動。
人間が何よりも尊び、貴方が何よりも憎むであろう情動から導き出される動作。

きっとそんな風にしなくても、貴方は壊れやしないのに。
寧ろ貴方が目の前の男を壊す側だろうに、“ノース”と名乗った男の手は優しかった。

2025-11-25 00:50:23 #1318
> ファントム(6)
“ノース” (ENo.2)
何度貴方が見返そうとも、崇拝も恐怖も存在しなかった。
きっと貴方が“そういうもの”だと分かった上でそれでもこの行動を取ったから、恐れることなど何もないのだろう。
自分だって利用していたのだから、恨むことなんて有り得ない。
混じる感情は変わらない。

自分と貴方の関係への苦悩。想いを伝えるべきかの躊躇。
出来れば嫌われたくはないという不安。一緒にいたいことからの寂寥。
そして────貴方とこうして向き合える、純粋な喜び。

負の感情は確かに混じっている。だけどきっと、膨れ上がったとしても変わらない。
怯えようと、震えようと、きっとこの男は貴方の手を取ろうとするだろう。
確かに“ノース”は一人だ。でも、何よりも喜びをくれる貴方がいるじゃないか。



見上げれば貴方はきっと一瞬だけ、何の変哲もない青年が微笑むのを見ただろうか。
2025-11-25 00:57:31 #1319
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
男の手指は酷く冷たい。
幾ら肉体を持とうとも、身体が体温を持つ事はなかった。
それは、人が踏み入れればあっという間にその温もりを奪い、飲み込み、凍てつかせ誰も生きられやしない冷たい場所で生まれた存在が故に。

生まれた時から、そういう場所にいた。
生まれた時から、誰にも真に触れられる事はなかった。

触れられる事程度ならば、あった。
それこそヒトの真似事をしていた時は。
だが貴方は、こちらの本当を知って尚こんな触れ方をする。

こんな。

「 、」

大切そうに。
慈しむように。
優しく。

貴方の感情のそれとは違うだろうけれど、男は想起した。
生まれたばかりの柔らかないのちに触れる、優しい手を。
いのちを慈しむ手を。
見上げ続けていた中のひとつにあった、ヒトのそれを。

形もない概念で、淀みの中にいた頃に見ていたもののひとつを。

「――――」

そうして、人は呼ばれるのだ。
静かな声で、柔らかく、暖かく。

名を。

>
2025-11-25 01:35:26 #1324
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
「……はなせ」

小さな声だった。
貴方から感じる感情は変わらない。何一つ。
不安、寂寥、そういったものを無意識に膨れ上げさせる為に、反射的に魔力を流した。

流した、けれど。
離せと言う割には男は貴方の手を振り払わず、肉体が硬直したように動かない。

微笑みが視界に入る。
貴方の、”貴方”の。

身がすくむ。首がすくむ。
背が丸まって、より顎を引いて、男は貴方を睨め上げていた。

>
2025-11-25 01:35:56 #1325
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
――力を持った絶対的な強者は、他者を見下し見下げる王者の目をするはずだ。
――しかし男は、強大な力を持っているはずなのに貴方を下から見上げている。


銀色の瞳が睨め上げている。
憎悪、恐怖、怨恨、そのどれもが存在し、強い感情ではあるけれど。
それよりも強く、嫉妬が浮かび上がっている。

ヒトは弱く脆いと宣っていたのに、これは他者を見下す目ではなく。
真反対の、常に嫉妬を抱いている他者を見上げた目だ。

さて、嫉妬とは、どこから生まれるだろう。
それはきっと、貴方を縛っている妖精が良く知っているはずだ。
――それはきっと、どうしようもない羨望から生まれるもの。

この男は、あらゆる生き物に羨望を抱いている。
だからこれは増悪する。壊そうとする。
こんなものは羨ましいなんて思う程大層なものじゃない。
全然良いものなんかじゃない。だからあんなに、簡単に壊れるのだ。

そのはずだ。……男は、それに、一度敗北を期しているのだけれど。
2025-11-25 01:37:32 #1326
> ファントム(6)
“ノース” (ENo.2)
それはきっと、貴方が間違いなく人とは違う者たる証左。
人を蝕み、堕落させ、混沌へと誘う者、冷たき場所から出ずる者であるからに他ならない。

しかし目の前の、貴方が“弱いヒトの中でも一際弱い存在”と表現したそれはまるでそれを気にしない。
そして同時に呑み込まれない。
あんなに曖昧だったノースポールは、貴方の目の前で“ノース”としての輪郭を未だ保っている。

「……、」

言葉はないまま、ただ貴方の手の甲をなぞる。
貴方の想起したそれは、確かに男の持つ感情とは違うものの強ち間違いでもないのだろう。
いのちを愛おしみ、慈しむ優しい手。
自分以外の誰かを大切に想うその手はきっと、どんな形であれ愛である証拠。

ただ一つ違うのは、そう。呼ばれないだけだろう。
それ以外は何も変わらない。
“ノース”は貴方を人間と同じように扱い、そして自分も人間らしく愛を差し出したのだ。

2025-11-25 02:24:39 #1328
> ファントム(6)
“ノース” (ENo.2)
貴方の声が聞こえれば、ゆっくりと瞳は手から貴方の顔へと戻る。
少しだけ唇を結んだところを見るに、貴方の魔力は間違いなく流れている。
それを示すように黒いカミツレは、さらさらと塵のようなものを発していた。

「  、……」

呼べる名前がないから、やはりその場に言葉はなかった。

不安は増す。このままにしていたら、本当に貴方に嫌われてしまうかもしれない。
寂寥は増す。いつか来るであろう別れ、この関係の終焉を想って。
だけど──貴方が此方を睨め上げるのを見て、この想いはもっと自分勝手に、日の光に当たる方に伸びていく。

知って欲しい。そんな風に見つめなくていいって。
知って欲しい。そんな風に思わなくていいって。
想いを感じ取る能力さえなくても、その目から想いが伝わってくるから。

だからこそ“ノース”は、貴方の言う通りに手を放す。

2025-11-25 02:32:24 #1329
> ファントム(6)
“ノース” (ENo.2)


──そして、冷たい身体を強く抱き締めた。

こっちを見上げることなんて出来ないように、そんな目を向ける暇さえ与えないように。
一番近くで伝える、貴方が自分にとって何なのか、自分が貴方にとって何なのかを。
少しだけ弱く、貴方から流される魔力で怯えながらも、それでも勇気を持って口を開く。

「──俺は、貴方の“ノース”だ。貴方に貰った、貴方の為の“ノース”だ」

「君は、だれ?」
「誰かに呼ばれた、亡霊のような形のない“ファントム”?
 それとも名もなき災厄?はたまた俺の知らない、別のもの?」

少しだけ力を緩めて、抱き締めたまま下から睨めないように真っ直ぐに視線を合わせる。

「……俺をそんな目で見る、“君自身”は誰?」

貴方の“ノース”は問いかけた。
先程貴方が自分に投げかけた問いそのものを。
2025-11-25 02:39:37 #1330
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
手が離れていく。放された。
そこで漸く男は身体を動かすことができて、バッと勢い良く手を引っ込めた。
触れられていた手は冷たいままだ。指は冷たいままだ。
この手は体温を奪う事しかできず、奪う癖に温もりを得ることはない。

だけども。

「…………、」

ずっと睨みあげていた相手が視界から消える。
否、消えたのではなくて抱きしめられたが故に、睨み上げる事ができなくなった。

魔力は正しく流している。
貴方の中の不安も寂寥も、増しているはずだ。
そういったものには敏感だからこそ、理解できる。

それなのに、弱い人間の筈の貴方はこの冷えた身体を抱き締めて、語る。
問いかける。

「俺はファントムだ。或いは災厄、或いは魔王、或いは闇の化身、或いは」

それらは名ではない。
形容詞だ。滅ぼした世界でそう形容されたから、だからその世界ではそれを名乗る。
男を示す形容詞が幾つあるかさえ図り知れない。
幻。亡霊。それが名詞に近かっただけだ。
それも形容詞である事には違いないけれど。

>
2025-11-25 04:01:31 #1332
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
視線を合わせながら、ただの形容詞を並べていた男は、さて。

「……」

貴方が投げかけるものに耐えきれなかったように、鈍い破裂音と共に己の目を魔力で潰した。
その内これは治すことはできるだろうけども、今はそのつもりがまるで無いのかその気配がない。

「どうしてお前らは、そこに生まれた」



両目があった場所から、黒い液体のような、黒い気体のようなものが流れ落ちていく。

>
2025-11-25 04:02:38 #1333
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
どうして俺はそう生まれなかった……!

肉体的な痛みはないのか、そういう素振りはない。

どうして、綺麗なものと同じように生まれなかった!!

ずっと見上げていた。
綺麗だった。美しかった。憧れていた。羨ましかった。

「冷たいままだ。
 濁ったままだ」

視線を下げればいつだってそこには淀みがあった。
己を見ればいつだって変わらない濁りがあった。
ヒトの中に生きたって何も変わらない。

黒いものは黒いままだった。
こうして抱きしめられていたって冷たいままだ。
穢らわしく、醜く、冷たく、どんなに羨んでも自分はあぁはなれない。

自分を封じた彼らのようにはなれない。
貴方のようになれない。

なれないからこそあらゆる存在は、己を”悪”と呼ぶ。
だが仕方ないだろう。己はそういうものから生まれたのだから。

……与えられたただの形容詞の、そのどれもが嫌いだった。

>
2025-11-25 04:06:19 #1335
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
生まれすら否定する、この存在の中心は。
――強烈な、自己の全否定だ。

己の存在を何よりも嫌悪し、憎悪し、己以外の全てがどうしようもなく羨ましい。
ヒトという存在を嬲って殺して壊しては、自分程度に壊されるなんて大したものではないと己を慰めた。
一度、敗北を期した事で、己はこの程度だったのだとより理解をしてしまったけれど。

逃げて、逃げて、逃げた先で。
かつてのように暴れ世界を滅ぼしたとしても、きっと慰めは得られなかった事だろう。
理解しているからだ。

ヒトの光を、彩りを、暖かさを――強さを。

「……”俺”なんていねェ」

静かな声で語る。
あぁ、ファントム幻影とは、似合いだったかもしれない。

生まれからして名を呼ばれず、その先もずっと邪悪の化身として生きてきた自分には、己を形容するものが淀みや闇や穢れの類でしかなかった。
そしてそれらが、何よりも嫌いで難かった。

「ヒトにはなれない。
 お前のようにはなれない」

「俺はそういうものだからだ。
 そう生まれたからだ」

>
2025-11-25 04:08:11 #1336
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
誰か、せめて呼んでほしかった。

貴方達が愛しさや慈しみを持って他者を呼ぶように。

ファントムでも災厄でもない、この何かを。



誰か。

せめて。


嫌悪するもの以外に、どうしたってなれないから。





――本当は。
本当は、光ある場所で、小さないのちとして、これは生まれたかった。
2025-11-25 04:10:21 #1337
> ファントム(6)
“ノース” (ENo.2)
“ノース”は貴方が答えるまで、じっと目を逸らさなかった。
自分の体温がいくら奪われたとしても、その身を放しはしなかった。
魔力によって己が身が震えようとも、怖いのは自分の感情に対してであって貴方ではない。

「ファントム」

貴方を形容する、その形の輪郭をただなぞった。
そこには最早色彩は存在しない、それが貴方じゃないことを知ったから。

それは貴方と言うよりも、貴方の見た他人からの印象。
貴方自身の本質を示すものできっとないから、その心に届かない。
多分皆、災害や自然現象に名前がないと判別がつかないから、ラベルを貼ったようなもの。

「災厄で、魔王で、闇の化身で、……色々なものであった“きみ”」

貴方が以前からそうであったことを否定はしなかった、それは間違いなく貴方の生まれた形だから。
だけど貴方を指し示す際に、そのラベルを使わなかった。
今の“ノース”にとって、君は君でしかないから。

2025-11-25 04:46:52 #1338
> ファントム(6)
“ノース” (ENo.2)
自分を見ることを止めた瞳を、それでもただ見つめる。
失われたそこから流れ出る涙のようなそれを、汚れることも構わずに拭う。
──否、これはきっと貴方の涙だ。間違いないと思ったから拭う。

どうして我々はそうだったのか。どうして貴方はそうだったのか。
その理由は残念ながら、単なる大学生でしかなかった“ノース”には分からない。
だから答えぬまま、ただ静かに貴方の想いを受け止めるばかり。

溢れ出す羨望、その咆哮。
ただひたすらに全てを受け止めようとするように、“ノース”は両手いっぱいに液体を受け止めて、また貴方を抱き締めて。
貴方の感情に、人のように共鳴した。
その苦しみを、冷たさを、そこにいるしかない貴方を想像して、哀しみを得た。

「……君は、きっと迷子なんだな」

自分と同じように、形の見つからない迷子。
つけられた呼び名を自分のものと認識できず、かといって自分の在り方を最早受け止めきれず、何処に行けばいいのか分からない悲しい子。

ならば自分も、貴方にしてもらったように返すべきだと考える。
自分の納得する形をくれた貴方に、自分から──心からの形を。

2025-11-25 04:57:45 #1339
> ファントム(6)
“ノース” (ENo.2)
「カミツレの花言葉、きっと君は知らないよな」

貴方を抱き締めたまま、穏やかに男は語り始めた。

「君がくれた花には、『あなたを癒す』『逆境に耐える』『苦難の中で生まれる力』……そういった意味がある。
 俺は嬉しかった。君にそういう意図がなくても、それを貰えたことが何よりも」

綺麗な花を、自分を解き放ってくれる花を貴方がくれたのが幸せだった。
そこに裏があろうと関係ない、貴方がくれた事実が色を与えた。

「────夕映ユウバエ、というのはどうだろう。
 夕映は夕日を受けて光輝くことで、同時にイカリソウの品種名でもある。
 イカリソウの花言葉は、『新たな人生』『人生の出発』『旅立ち』」

「イカリソウは紫色の花を咲かすから、君の綺麗な髪色そのものだし。
 夕日を受けて輝くことは、光じゃない故に光を浴び、それをよく知る君に相応しいし。
 花言葉は……君の存在を新しくするのに、ぴったりだと思う」

愛おしむように髪を撫で、何も見ないままの表情を見つめて、最後にもう一度めいっぱいに抱き締めて。
“ノース”は改めて息を吸う。

2025-11-25 05:12:26 #1340
> ファントム(6)
“ノース” (ENo.2)
「それにね、花言葉には他にも……『君を離さない』『貴方を捕らえる』というものもある。
 これは俺からの、君にだけの贈り物だから。
 俺の想いをそこに含めることを……どうか許して」

諦めていた、一緒にいることを。貴方に本当の意味で求められることを。
だけれどやっぱり傍にいたい。自分はカミツレとして咲いていたい。
そしてそこに新たな願いが折り重なり──貴方にもまた、自分の為の花として咲いて欲しくなった。

「俺が、離さないから。
 暗いところでも、明るいところでも。
 幸せなところでも、そうでないところでも」

「何度でも君の名前を呼んで、君の輪郭をなぞろう。
 光に押し潰されそうになっても、闇に溶けてしまいそうになっても、俺が見つけ出す」

自分にとって、貴方は災厄でも、魔王でも、闇の化身でも、幻影でもない。

貴方は、

「……夕映。闇であるからこそ光を知る者。
 闇の中で綺麗に咲いた、俺の愛しい一輪の花」

「だからもう、……大丈夫だよ」
2025-11-25 05:24:28 #1341
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
あらゆる人を殺した。
あらゆる世界を壊した。
どうしようもなく焦がれた心に蓋をして、自分を生み出した世界を憎み、自分に力を与えた人々を嘲笑し。

己は幻影だ。
己は災厄だ。
己は魔王だ。
己は闇の化身だ。

まるでそう在れかしと、あらゆる世界から言われたようだ。
正しい。何も間違ってはいない。
貴方に、改めて呼ばれたそれらをただ黙って聞いていた。
だくだくと、黒い涙が、血がずっと流れ続けている。

それは貴方の手を汚し、拭ってもぬぐっても流れ続けて黒く染めていく。
ぼたぼたと地面に零れ落ち、貴方の衣服にだって汚すだろう。

何故貴方たちという存在と、自分という存在に分かたれたのか。
そういうものだったからと言ってしまえばそれだけだった。
誰も答えは持っていない。そこに人が理解できる理屈はきっとない。

そういうものだった。仕方がなかった。
そうして”これ”は、そのように振舞った。
世界に望まれた形と言えよう。

「何処にも行けない」

何も見えない中で、貴方の気配と声が届く。
迷子。その通りかもしれない。
これは行き場を失い、陰であろうと引いた道を失い、暗闇の中何処にも行けなくなった何かだ。

否。此処にしかお前は在れないのだというように、これは暗闇の中に揺蕩っている。

>
2025-11-25 11:07:09 #1342
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
「……そんなもの、知らない。知らねェ」

花言葉、そういったものを知識として入れなかった。
花にすら意味があるのかと思った。
貴方にあげた花はただ己が適当に形作ったものだったし、ただ利用しただけだったから。
冷たい理由で、適当に渡しただけなのに。

「…………」

夕映、と音もなく唇が形作る。
日は美しい。日は暖かい。まるでヒトそのものだ。

流れ続ける黒いものから、落ちた黒いものから、貴方を汚している黒いものから。
ぽこ、ぽつ、と小さな気泡がゆっくり膨らんではすぐに消えていく。

――もう一度、貴方に抱き締められた体から、今度は体中から目立った場所から流れるものと同じそれがじわじわと滲み、流れ落ち始めた。

それはいくら排出したって止まる事が無い。
いくら吐き出したって変わらず流れ続け、自らから無くなってはくれない。
ただただ暗い感情を伴うそれは、己自身だ。

「俺に意味を与えたって、何も生み出さない」
「そこに想いを含めたって、応えてやれるものはない」

暖かいと思った。綺麗だと思った。
貴方の想いは、願いは、こんなにも鮮やかで美しい。

何故それを持てるのだろう。
何故それが持てないのだろう。
何故、持てない自分に与えてくれるのだろう。

>
2025-11-25 11:13:12 #1343
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
小さく生まれては消える種のような黒い気泡が、消えても消えてもそれでも尚生まれ続ける。
言葉とは裏腹に、貴方が降らせてくれる光の粒を呑み込んで、花咲かせようと暗闇の中で懸命に。

夕映

掠れた声だった。
全身から流れる黒いものは、地面に零れ落ちた黒いものは、貴方を汚す黒いものは。
気泡を生み出すのをやめて、静寂を生む。

どれ程の時間か、短いか、長いか。
しん、と静まり返り動かなくなったそれは。

>
2025-11-25 11:14:23 #1344
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
――男の足元から、背中から、一気に芽吹かせるようにイカリソウの花がこの土地全面に広がった。
流した黒いものからも小さなそれが咲き誇る。


それは美しい紫色ではなく、変わらず黒いもので、形ばかりをなぞったものだったけれど。
日の光の一切を反射せず、それを、色を呑み込むどこまでも深い黒色だったけれど。

「…………」

少しだけ、貴方の体から離れようと身を捩る。
精一杯咲き乱れた花々は、咲いた傍から徐々に、少しずつ、塵となるように消えていくけれど。

男の顔は、全身から流したもので真っ黒だ。
だが、眼球の再生はし始めていたのか。
黒濡れの中から、覗くように銀灰色が貴方を見ていた。

男は何も言わずに、そっと指先で一輪の真っ黒なイカリソウを摘まむように持っていて。
それを、貴方に差し出している。
2025-11-25 11:15:36 #1345
> ファントム(6)
“ノース” (ENo.2)
最早貴方の流すもので服も自分も真っ黒だった。
だけど嫌じゃなかった、血であり涙であるようなそれを受け止められるのは寧ろ光栄なことだった。
だって貴方はヒトじゃなかったから、そうでないと規定されたから、それらを流すことさえ許されなかっただろう。
──だからこれは、自分だけ。

「じゃあ、やっぱり迷子だったんだな」

何処にも行けないという貴方に、ノースは呟いた。
闇夜に生まれついたのに、そうであるという形が揺らぎ、自分が何なのかを保てない。
同じだったのだと改めて思う。

「……大丈夫、新しく形を作ろう。
 イカリソウは錨に似た花、錨は……船を流されぬように留めるもの。
 流されないよ、君の形は。流されるんじゃなくて、これから波に乗って旅に出る船だ。
 俺は君が迷わないように羅針盤にでもなる」

誰の風評にも、どんな概念にも負けないように心を籠めて言葉を紡ぐ。
貴方の形を編んでいき、同時に自分自身に力を与えていく。
貴方に“そうであって欲しい”と願うほどに、自分もまた貴方にとって“そうでありたい”という形が生まれる。

2025-11-25 12:09:18 #1354
> ファントム(6)
“ノース” (ENo.2)
「だよな。花や石に言葉をつけるのは、ヒトの心から生まれる情緒的な文化だ。
 それらの雰囲気から意味や意思を感じ取り、言葉として飾り付ける。
 多分今まで夕映にとって、興味のある内容じゃなかったと思う」

花も石も、星も鳥も。
何かを観測した人間は、自分の納得した印象をその存在に付与する。
それは我が物顔で何かを定義付けする行為であり、貴方がされてきたことで、今自分が貴方にしていることなのかもしれない。
それでも、それでも貴方を繋ぎ止められるなら。

「夕映。様々な色が折り重なる、光と闇のあいだ。
 直接的な光ではない、光を受けて姿に輪郭を持つもの」

色んな場所から溢れ出していく黒をまた手で掬いながら、真っ黒の中で形を見る。
冷たくて寂しいそれすらも受け入れる、貴方自身であるならば。
ゼロにならなくたっていい、ヒトもまた影を持つのだから。

「それは今までの君の話、だろ」
「与えるし、いくらでも差し出そう。
 応えられなくたって、俺はいつかを夢見て生きていられる」

今の貴方はきっと、そうではないと信じた。
持てない貴方ではないと信じた。
勿論、そうじゃなくたってこの愛は失せるものではない。

2025-11-25 12:25:26 #1355
> 夕映(6)
“ノース” (ENo.2)
気泡が何を指すのかまでは分からなかった。
良いものか、悪いものかも分からない。
ただ貴方が大事だから、離さないままでいた。
形が崩れていなくなってしまわないように。

「……うん、君は夕映」

小さく零れ落ちた声に、重ねるように囁く。
貴方の名前を優しく呼べば、気泡が静かになって。

どういうことだろうか、と見つめていた最中だった。

2025-11-25 12:28:44 #1356
> 夕映(6)
“ノース” (ENo.2)
ずっと脳裏に描いていたその花が、全てを覆うように咲き誇る。
驚きから、ノースはか細い息を吐いた。

──黒いイカリソウ。
きっと自然界では存在しない、真っ黒のそれ。
ただの黒い花でもない、吸い込まれそうな漆黒の色。

「……夕映?」

ずっと動かないでいた貴方が動くのを感じて、少しだけ腕の力を緩める。
花々が消えていってしまうのが惜しい。
ずっとずっと咲いてくれても良かったのに、なんて思う。

だけど、貴方の瞳が漸く見られたことへの安堵がすぐに勝る。
此方を見なかった瞳が、銀灰色が此方を見て何かを差し出してくる。

「……、ありがとう」

真っ黒な、貴方にしか咲かせられないイカリソウ。
それをそっと優しく摘まみ、受け取ろうとする。

初めて、貴方にお礼を言った。
2025-11-25 12:35:50 #1357
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
闇夜に生まれ落ちた事を誇れなかった。
それを肯定できなかった。
いつだって暁光が羨ましかった。
世界の始まりの、分かたれたその瞬間からずっと。

貴方に差し出した花は、懸命に形を保っている。
新しく形作られたそれを崩れまいと、花弁の先からちりちりと、細かな砂のようになって風に流れていきそうであってもそれはどうにか形を保っていた。
男は何も言わなかったが、そうありたいという願いそのものだ。

貴方がくれた形と光を受けて、それはやっと輪郭を保っている。
貴方が信じてくれて、それは必死に応えようとしている。

夕映は、貴方がたった一輪残った形の悪いイカリソウを受け取ってくれて、ゆっくりと差し出していた手を引いた。
イカリソウの形をなぞる崩れかけの黒花を、やはり美しいとは思えなかった。

それでも貴方は受け取って、感謝を紡ぐ。
貴方から、初めて聞いた感謝の言葉。

だから、幾分、僅かばかり。マシだ、と感じられた。

「……お前に……」

男はゆっくりと、瞼を落とす。
貴方に花を渡して、身体が傾ぐ。

>
2025-11-25 13:38:04 #1360
> ノースポール(2)
ファントム (ENo.6)
自分が零したものは、黒くて冷たくて、すっかり貴方を汚してしまった。
汚さないでいられたら良いのにと思った。
だけど汚しても、貴方は暖かくて色付いているように感じられた。
羨ましかった。

イカリ、ソウは
カミツレと、共に…………」

傾いだ体は貴方の方へと倒れていき、肉体から完全に力が抜けた。
小さく小さく、願いだけを口にして。

――男は意識を手放した。

気付けば貴方へ渡した一輪の花は、一粒の黒い種となり貴方の手に残った事だろう。
2025-11-25 13:40:00 #1361
> 夕映(6)
“ノース” (ENo.2)
「……ちゃんと生きてるんだな、君の願いは」

他の花達が散ってしまっても必死に此処に残ろうとする手元の花を見て、そんな言葉が零れ落ちる。
咲いた先から塵になりながら、しかしてその形を崩さないようにと願うそれは生きているのと何ら変わりはない。
その小さな一輪の花から、ノースは貴方の願いを見た。

「ありがとう、応えようとしてくれて。
 ちゃんと伝わってる、闇に呑まれてなんていない。
 夕映の想いの輪郭は……確かに此処にある」

信じて、そしてそれに応える姿を、誰が幻影などと呼べようか。
こうして懸命に咲く花を、どうして亡霊などと呼べようか。
貴方は生きている。このイカリソウが教えてくれるように。

「俺にとって、一番美しい花だ」

貴方にとって美しくなくとも、それは自分にとって何よりもの宝物。
どんなに完璧なものよりも、生きようとする意思を感じる不完全。
これを美しくないなんて、誰にも言わせない。

ノースは貴方を見据えたまま語っていたが、身体が傾ぐのを見て慌てて受け止める。

2025-11-25 13:55:15 #1363
> 夕映(6)
“カミツレ” (ENo.2)
確かにこれの姿は、もうすっかり黒く染まっていた。
だけど貴方にとって色づいて見えるのは、きっと貴方への想いが宿っているからだ。
貴方がいくら汚そうとも、自分だけの一輪を愛でる気持ちは変わらない。

──貴方もいつか、きっと同じになれる。
男は何度だって貴方の形をなぞり、繋ぎ、愛するから。
この一輪を咲かせられた、貴方なら。

「……ああ」

貴方の小さな願いを受け止め、力が抜けた身体をしっかりと抱き止めた。
片手に残る種の感触を意識して、これもちゃんと持って帰らないといけないと強く思う。
貴方がくれた花を、大事にしたい。

貴方の“カミツレ”は、そのまま何とか一つしかないベッドに貴方を横たわらせ、一度小さな小箱に種を入れる。
目が覚めたら植木鉢を貰いに行こうと考えながら、狭苦しいベッドに一緒に潜り込んでから貴方を温めるように抱き締める。
それから目を閉じ、此方もまた意識を手放していく。

──その日、男は久しぶりに自分という認識と、姿の輪郭を保ったまま眠りについた。
2025-11-25 14:04:29 #1364